スペアタイヤがなくても大丈夫? 変わりゆく車の”もしも”対策

かつては当たり前のように装備されていたスペアタイヤですが、最近の新車では見当たらないケースが増えています。代わりに小さな箱のような「パンク修理キット」が収納されているのを目にすることが一般的になってきました。この変化の背景には、自動車産業を取り巻く様々な要因が関係しています。
本記事では、スペアタイヤレス化の流れとその影響について、詳しく解説していきます。
車にスペアタイヤが装備されなくなった背景

自動車業界でスペアタイヤの廃止が進んでいる最大の理由は、環境規制の強化と燃費向上への要請です。世界的な環境意識の高まりを受け、各国で自動車の燃費規制が年々厳しくなっています。自動車メーカーにとって、車の軽量化は燃費向上の重要な手段のひとつとされています。
スペアタイヤは、タイヤ本体に加えてホイールやジャッキなどの工具を含めると20kg以上の重さになることも。車が20kg軽くなると燃費は約1%向上するといわれているため、スペアタイヤを積まなければ燃費の向上が狙えるのです。
また、近年の都市部での駐車場不足を背景に、限られた車体サイズの中で少しでも多くの荷物を積めるよう、収納スペースの確保も重要な課題となっています。スペアタイヤを搭載しないことで、トランクスペースを有効活用できるようになります。
さらに、製造コストの削減も大切です。スペアタイヤとその関連部品の製造・搭載コストを省くことで、車両の製造コストを抑えることができます。
スペアタイヤの代替手段のふたつを紹介

スペアタイヤの代替として主に採用されているのが、パンク修理キットとランフラットタイヤの2つです。
パンク修理キットは、タイヤの損傷部分に応急的なシール剤を注入し、エアコンプレッサーで空気を入れる応急修理用の道具です。キットは小型軽量で、重量はわずか2-3kg程度。収納スペースも最小限で済みます。ただし、タイヤのトレッド面(路面と接する部分)に直径4mm程度以下の穴が開いた場合にのみ使用可能という制限があります。
一方、ランフラットタイヤは、パンクしても一定距離の走行が可能な特殊なタイヤです。タイヤの側面を強化することで、空気圧が0になっても車体を支えることができます。ただし、通常のタイヤと比べて価格が高く、乗り心地も若干硬くなる傾向があります。
スペアタイヤがなくなったことへのユーザーへの影響

スペアタイヤレス化によって、パンク時の対応は大きく変化しています。従来のようにスペアタイヤに交換するという選択肢がなくなり、パンク修理キットでの応急処置か、レッカー移動が必要となるケースが増えています。
実は、パンク修理キットでは対応できないケースが少なくありません。タイヤ側面の損傷やバースト(破裂)の場合は使用できません。地域による課題もあり、都市部であればロードサービスの手配もスムーズですが、地方部では対応に時間がかかる可能性があります。
修理費用の面では、パンク修理キット使用後のタイヤはパンク修理ができず新しいものに取り換えなければいけなくなる可能性もあります。もちろん、新しいパンク修理キットの用意も必要です。
まとめ

スペアタイヤが標準装備から外れることは、環境対応や車の進化に則った流れだと紹介しました。
パンク修理キットが標準装備の車を選択する場合は、事前に使用方法を確認するなど、適切な準備を心がけることが重要です。さらに、パンク修理キットは意外と使えない場面も多いので、いざという時のためにロードサービスの連絡先を確認しておきましょう。