軽自動車はなぜ660ccで64馬力?意外と気になる軽規格の歴史
軽自動車のカタログを見ると、多くの車種で排気量は「660cc」、ターボ車の最高出力は「64馬力」と書かれています。どちらもおなじみの数字ですが、「なぜ660ccなのか」「なぜ64馬力なのか」まで知っている方は少ないのではないでしょうか。
実は、この2つは決まり方がまったく違います。660ccは法律で定められた軽自動車の規格ですが、64馬力は法律上の上限ではありません。今回は、この2つの数字がどのように定着したのかを紹介します。
「660cc」と「64馬力」はどうやって決まった?

現在の軽自動車は、全長3.40m以下、全幅1.48m以下、全高2.00m以下、排気量660cc以下と定められています。つまり660ccは、「これを超えると軽自動車ではなくなる」という明確な基準です。
ただし、軽自動車が昔から660ccだったわけではありません。1955年から1975年までは360cc以下でした。その後、1976年に550cc以下へ拡大し、1990年から現在の660cc以下となっています。車体サイズも時代とともに拡大し、1998年には現在と同じ全長3.40m、全幅1.48mになりました。
一方、「軽自動車は64馬力まで」というのは法的な規格ではありません。軽自動車の規格には排気量や車体サイズの条件はありますが、「最高出力64馬力以下」という決まりはないのです。
64馬力が広まったきっかけとして知られているのが、1987年に登場した初代スズキ・アルトワークスです。543ccのエンジンにターボを組み合わせ、最高出力64PSを発揮しました。
1980年代は軽自動車でも高性能化が進み、メーカー間の出力競争が激しくなっていた時代です。アルトワークスが64馬力に達したことをきっかけに、その数字がメーカーの自主規制値として定着したとされています。
つまり、「660cc=法律上の規格」「64馬力=メーカー側の自主規制」という違いがあります。そのため、660ccのエンジンで64馬力を超えても、それだけで軽自動車ではなくなるわけではありません。
排気量・馬力・トルクの違いをざっくり理解しよう

車に詳しくないと、「排気量」「馬力」「トルク」の違いは少し分かりにくいかもしれません。
排気量は、エンジンの大きさを表す目安です。一般的には排気量が大きいほど、多くの空気と燃料を使って力を生み出しやすくなります。
馬力は、加速したり速度を伸ばしたりするときの余裕を表す目安です。馬力に余裕があると、高速道路への合流や追い越しなどで走りやすくなります。
トルクは、車を前へ押し出す力の強さを表す目安です。発進時や坂道、荷物や乗員が多いときに違いを感じやすくなります。
簡単に覚えるなら、「排気量=エンジンの大きさ」「馬力=加速や速度の余裕」「トルク=発進や坂道での力強さ」というイメージで十分です。
また、排気量が小さくても、ターボで多くの空気を送り込めば、より大きな力を引き出せます。軽自動車のターボ車が、660ccでも力強く走れるのはこのためです。
64馬力でも十分?軽自動車選びで見るべきポイント

「660ccで64馬力」と聞くと、普通車と比べて物足りなく感じる方もいるかもしれません。
例えば普通車のコンパクトカーでは、トヨタ・ヤリスの1.0Lガソリン車が69PS、1.5Lガソリン車が120PS、ホンダ・フィットの1.5Lガソリン車が118PSです。数字だけを比べれば、軽自動車の64馬力は控えめです。
ただし、車の走りは馬力だけでは決まりません。軽自動車は普通車より車体が軽く、ターボ車なら660ccでも十分なトルクを発揮できます。そのため、街中の発進や加速では大きな不満を感じにくい車種も多くあります。
一方、高速道路への合流や坂道、4人乗車などでは、排気量に余裕のある普通車との差を感じやすくなります。また、馬力やトルクは高ければ高いほど良いわけでもありません。高性能になるほど燃料を多く使ったり、車両価格が上がったりする場合があります。
街乗り中心なら自然吸気エンジンでも十分、高速道路や坂道をよく走るならターボ車が便利、といったように、使い方に合った性能を選ぶことが大切です。
軽自動車はすべて660cc以下ですが、走りは車種によって大きく異なります。自然吸気かターボか、車体が軽いか重いかによっても加速感は変わります。64馬力だから必ず速い、64馬力未満だから走らない、というわけではありません。
軽自動車を選ぶときは数字だけを見るのではなく、普段どこを走るのか、何人で乗るのか、高速道路を使うのかなど、自分の使い方に合った一台を選んでみてください。


